ーこの教則本は、どのようなアプローチを考えていたのでしょうか。
木村大(以降、木村):1年くらい前から考えていて、僕がヤマハのギターを使っていたり以前からヤマハの方々との関わりがあったので、節目には1冊の本を作りたいという気持ちがありました。
あと、4年前に「木村大 Music Lab.」と題してギター、ヴォーカル、ウクレレ、作曲コースを含む音楽教室をプロデュースすることになりました。
僕は茨城の土浦で生まれ育って、父は50年以上ギター教室を主宰しています。
土浦には、父が作り上げてきた歴史もあり、コロナ禍を経て土浦の文化人がどのくらい集まるんだろうという期待をこめてMusic Lab.を立ち上げました。
自分が想像している以上にこのエリアには文化人がいて、今では100名を超える方達が世代も広く集っています。
そんな中で、僕はギタリストであるのでナイロン弦ギターのふくよかな音や、どこにでも持っていけるギターの素晴らしさを伝えられるようなメソッドを、僕なりに感じる数多くある成果の中の一つの正解を、皆さんとシェアする形をとってもよいのではという思いから、この教則本ができました。
ー木村大さんはクラシックギタリストですが、この教本ではクラシック以外のポップス等を取り上げています。クラシックギターとは異なるアプローチなのでしょうか。
木村:数ある楽曲の中から一番最短で上達する曲として、クラシックからポピュラーな曲まで厳選した曲集になっています。
小さな子供が弾いていて、親や兄弟がこれはこういうメロディでこういう歌詞だったよね、とか一緒に歌ったりして関わりあえるということも考えて、クラシックだけではない選曲です。
ークラシックではカルカッシなど、初心者にハードルが高いイメージがあります。クラシックギターをこれから始めたいという人に対して、こういった教本はこれまでもあったのでしょうか。
木村:そうですね。最近はYouTubeなどであらゆる情報を素早くキャッチできるので、一言でクラシックギターといってもカルカッシやソル、ジュリアーニなどを選ばなくても、みんなが知っている作品で技術力をあげていく工夫がされている教則本も出ていると思います。
ーこの教本は「6カ月」というのを目処としています。これは完全な初心者でもいいし、ある程度ギターを弾いたことのある人たちも対象としていますか?
木村:はい、全ての人にリーチする内容です。目標を明確にゴールがわかりやすい方がよいと思いました。ギターの練習は孤独な作業じゃないですか。黙々と集中しながら時間を忘れて弾くくらいが理想ではありますが、この教則本を通して自分一人ではないということも伝えたかったです。6カ月というのは成果を実感でき、一つ一つのステップを踏んでいけると考えた期間です。
小さなお子様だとトライアルの1週間から1カ月、2カ月と進んで行く中で、この1カ月を2、3カ月かけるのもいいと思います。お子様に関しては、ゆっくりとそれぞれのペースに合わせて集中力を高めて時間を増やしていくことが重要です。
大人の方はのめり込んだら仕事をしながらでも時間を見つけて練習しますが、1週間のプランを立てるのも重要です。目標を設定できるような本になっていると思います。
ーいろいろな世代に知られた選曲をされていますね。
木村:はい、教室ではいろいろなトライを繰り返しています。より成果がすぐに得られる機能性を持たせた曲を抜粋して、僕たちが4年間現場でやってきた一つの形を提示しています。現場でやっていることとほとんど変わらないですね。
ーこの教則本は音楽教室の活動の集大成のようなところもあるんですね。
木村:そうですね。僕は子供を半年間みます。大人の方は他に2人のギター講師がいるので、そこでカリキュラムを組みます。現場を通じてこれでは成果がでないなどみんなで話し合って選ばれた作品です。
新しく始める方は幼稚園児から90才くらいまで幅が広く、3分の1くらいは子供です。
小さなお子様には家族のサポートも必要です。10分くらい座るのも限界となることもあるので、そこから30分のレッスンにしていくのに3カ月くらいかかったりします。そういったことにもあう作品がこの教則本にあります。
また、僕たちの一つの答えは小さなお子様も大人もそんなに変わらないというところです。
小さなお子様でも大人でも一つずつ積み上げていくと1、2カ月くらいで基礎が固まってきて、どんどん上達していきます。
そこは見ていてとても楽しいのですが、テキストにしていくのはとても大変でした(笑)。
ー最初はクラシックを演奏したいとして来られるのでしょうか。
木村:いえ、そうではないです。ナイロン弦のクラシックギター、スティール弦のアコースティックギターという区別も知らない方がほとんどです。僕らはアコースティックギターでも対応できるので、そのままレッスンを進めています。
中にはクラシック一辺倒の方もいますし、アコギでスラップやパーカッシブな演奏をしたいという方もいます。いろいろな方がいますね。
その中でナイロン弦を弾いた時の音のふくよかさや、生ならではのサウンドに魅了される方が増えていると感じます。
この本を出すきっかけの一つとして、人口では圧倒的にスティール弦が多いですが、ナイロン弦の良さやふくよかな音を伝えていきたいと思っています。
ー今は普段スティール弦を弾いている方でもナイロン弦を使う人が増えてきていると思います。
木村:曲に応じてギターを使い分ける人が増えていて、隔たりがなくなってきていると思います。それぞれの良さがあり、ギターを楽しく弾いているという印象を受けています。
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