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ー8年ぶりにニューアルバム「Voyager」をリリースしました。まずはアルバムについてお聞きしたいと思います。この「Voyager」というタイトルはどのような思いでつけたのでしょうか。
ペッテリ・サリオラ(以下、サリオラ):このアルバムの音楽と物語はある架空の世界を舞台としています。そこでは「Voyager」と呼ばれる有人宇宙船が宇宙へと送り出されますが、そのミッションの詳細は明かされていません。船は航海の記録を“楽曲”という形で送信してくるのですが、実際には何十もの記録があったはずなのに、受信されたのはこの13曲だけ、という設定です。
つまり私たちは、長い航海のごく断片を垣間見ることになります。閉ざされた空間での人間関係、異なる文化背景を持つ人々の共存、共に働くこと、愛が冷めていくこと、そして悲しみと向き合うことなど。
アルバムはVoyagerの打ち上げを祝う盛大なパレードから始まります。宇宙船には数十人、あるいは数百人の旅人が乗っています。しかし物語は徐々に収束していき、やがて登場人物は減って最後には一人の宇宙飛行士だけが残ります。その人物は崩壊し、ゆっくりと星々や宇宙と一体化していきます。彼は途方もない悲しみに直面し、自分自身と同じように崩壊していく宇宙船の中で、失意と孤独に苛まれます。あらゆるものから切り離された主人公は、宇宙そのものと一体化していきます。
私にとって、この作品は、未知へと踏み出すことについての物語で、美しくもあり、過酷でもあり、愛に満ちていながらディストピア的でもある世界への冒険なのです。

ー前作「Resolution」までは三部作でしたが、「Voyager」はどのような新しいテーマや方向性が描かれていますか?
サリオラ:「Resolution」までは誕生/成人/死を描いた三部作でしたが、「Voyager」は新たなアルバムシリーズの幕開けとなります。今回は何作で完結するかはまだ決めていません。
「Voyager」はアイデンティティの断片化をテーマにしています。コロナ禍のロックダウン中に私自身はそれを経験しました。ちょうど父親になったばかりで、短期間のうちにスタジオと自宅を何度も引っ越しなければなりませんでした。初めての家を購入し、街の別の場所に引っ越した直後に、コロナが襲ってきました。あまりにも多くの変化が一気に押し寄せ、それが積み重なって大変な状況になりました。「私は一体何者なのだろう? 以前は自分が理解できていたのに」と自問自答し続けました。現実がディストピアのように感じられ、ライブの観客との繋がりが断たれたあの数年間、こうした疑問は私を悩ませ続けました。未来を計画することなどできない、異国の地に取り残されたような感覚でした。周囲は静寂と不安定さを同時に感じていました。
この宇宙をコンセプトとしたオペラの続編は、まさに今私が経験している、自分自身を再発見することをテーマにしたものになると思います。宇宙をテーマにした理由ですが、子供が幼稚園の頃に天文学に夢中になったことがきっかけで、私も関心を持つようになりました。それがアルバム「Voyager」の宇宙テーマの源泉です。今では我々の共通の趣味になっています。
「Voyager」をリリースする時、アーティスト名から私のファーストネームを外し、「Sariola」とする時が来たと感じました。海外ではファーストネームの綴りが間違って表記されることが多かったのですが、「Sariola」は常に正しく表記されていたので、自然な流れだと感じました。日本ではどちらの名前もまだ一般的に使われていて、正しく表記されているのでおそらく伝わらないかもしれませんが、私がソーシャルメディアでファーストネームを省いている理由を疑問に思う人がいるかもしれないので、あえて言及しました。「Sariola」はよりオープンで短く抽象的なイメージがあり、音楽をどこへでも押し広げるためのより自由な芸術的余地が生まれます。
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