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ギタリストインタビュー矢後憲太
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ーM-Factoryのギターというのは素晴らしい鳴りですが、音を出すのが難しそうです。M-Factory

矢後:そうですね。一般的な鳴りやすいギターとは違うと思います。。爪でひっかくだけでは鳴ってくれず、しっかりとしたタッチで弾いてあげないといけません。M-Factoryはとても繊細なんです。ドレッドノートのギターというのはブルーグラスなどでガンガン弾くような、ワイルドなイメージがありました。繊細な音を出すのにはどうなんだろうという気持ちがあり、いろいろなドレッドノートを弾いてみたのですが、やはり繊細さをあまり感じませんでした。タッチについてこないというか、自分の意図した音が思ったほどは出てくれなかったんです。でも、M-Factoryのドレッドノートはそれが出てくれたんです。こんなダイナミックな音が出て、こんな繊細なニュアンスまで出せるというのには震えがきました。これをフェスの時に感じとってしまったんです。こんなドレッドノートは無いと思い、これしか見えなくなってしまいました(笑)。トップの厚みが3.7mmと、他のギターに比べるとかなり厚くなっています。厚いと鳴らなくなるのかというと、そういう訳ではないです。僕がこのギターを選んだのは単純に音がいい、音が大きいとか鳴らしやすい、扱いやすいかどうかといったことではなく、自分が求める音を再現してくれるギターかどうかの一点なんです。自分に応えてくれるギターというのを探していました。
このギターは実験的な要素も満載だと思います。ギター製作家の沖田正和さんが作られていますが、元々クラシックギターの製作家ですし、アコースティックギターの作り方と異なる点もあるようです。沖田さんは多分どうすれば鳴らしやすくなるかとかをコントロールできると思うんです。今作っているギターも個体によっていろいろな違いがあると思います。鳴らしやすいのもあるのかもしれませんが、鳴らしやすくするために失われるものもあると思っています。このギターそのものを僕は気に入っているんですね。
先程お話ししました、小松原さんに言われた音の芯ということが、このギターで理解することができました。出したい音に応えてくれるとか、ソロで弾くギターと、バッキングで弾くギターは大きな差があって、弾き語りで使うギターというのは大きな音が出る方がいいのですが、ソロで使うギターは音の芯やレスポンスを大事に選んでいかないと、幅広い表現ができないということが自分で使ってみて始めてつながってきました。

ー言葉で何となくはわかっても実際にその音を表現しないと理解はできないのでしょうね。

矢後:そうなんです。テイラーを使っている時に音の芯が。。。と言われてもピンとこなかったんですね。このギターも鳴るのに何がダメなんだろうと思いました。でも、M-Factoryの反応は異次元でしたね。「速い」というのではなく、「よい」ということです。僕の中ではレスポンスが「速い」と「よい」では意味が違うんです。レスポンスが速い、というギターを弾いてみると音の立ち上がりがものすごく速いというのはわかりますが、これはベクトルの一つなんです。タッチにどれだけついてこれるかというのは速さとは別なんですね。タッチへの追従性と音の立ち上がりというのは全く別に考えなければいけません。僕のM-Factoryのギターはそんなに立ち上がりが速い訳ではないんです。でもタッチへの追従性がすごくいいんですね。だからこそ欲しいトーンが得られるし、同時にミストーンなども忠実に拾うので、弾き手にはシビアな楽器だと思います。

音は右手で作るものだと思っていて、こういうことを曲の中にひとつひとつ散りばめてます
ーM-Factoryという相棒を得て、レコーディングをされましたね。

矢後:アルバムというのは周りからも要望をいただいていました。M-Factoryを購入した時も、ギターを買ってないで早くアルバムを作ってよという声もありました(笑)。このギターで表現して、アルバムを作りたいという気持ちが芽生えたので製作することになりました。

ーレコーディングはいつされたのでしょうか。
機材
矢後:3月ですね。今回の選曲は今までの曲を作品として残したいという気持ちがありました。ライブ活動はしているけど音源はデモしかなく、曲はどんどん作っているので、たまっていくんですね。今レコーディングしておかなければいけない、という気持ちになってきました。これらを10年後に弾いているか、ということを考えた時に、入れるなら今だと考えましたし、お客様の声を反映して選んでみました。毎週ライブをやっているので、その時にアルバムに入れてほしい曲がありますか、と聞きながら選べば1枚目としてはひとつ正解かなと。

ー矢後さんの演奏スタイルというのは奇抜ではないですが、誰かに似ているというのをあまり感じません。現在ご自身で誰かの影響を受けてるといった感覚はありますか。

矢後:以前は押尾さんぽい曲しかできなかったりしましたが、やはり自分が作った曲が誰っぽかったと言われるのは、褒め言葉であってもちょっとショックもあります。そういうことを言われないように、という意識があった時もありますが、今は自由にやろうと考えています。誰かに似てるかという意識もなく、結果的にどうなってるかわかりませんが、自由に好き勝手やらせてもらってます(笑)。

ー全体的にさわやかな曲が多いですね。

矢後:今後は毒々しい曲も(笑)。今見返すと曲順もライブのようですね。

ー収録曲は最近作った曲でしょうか。

矢後:「にびいろの風」は結構前に作ってますが、その他は最近ですね。

ーアレンジ曲は「Amazing Grace」と「A Whole New World」がありますが、どちらも独特なアレンジですね。特にソロギターでも定番の「Amazing Grace」のアレンジは個性的です。

矢後:やりたい放題ですね(笑)。平坦なアレンジにしたくなかったんです。美しい曲なので、素直に美しくアレンジしている方はたくさんいますが、それを僕がやってもあまり意味がないと思いました。美しさもありつつ、楽しく、インパクトのあるアレンジにしました。お腹いっぱいになるまで音数を増やしています(笑)。親しみやすい曲を原曲通りにアレンジするのがあまり好きでなくて、ユニークで僕らしさを出さなければいけないと思っています。「A Whole New World」も無理矢理転調してみたり(笑)、和音をこうしてみたりとか、ここであと半音下げた音が欲しいからチューニングを下げられるようにしようとか、そういった工夫を一つ一つ入れていったら、独特なアレンジになったと思います。
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矢後憲太 http://acoustic-kenta-y.jimdo.com
1990年栃木県生まれ。フィンガースタイルギタリスト。多彩な奏法を駆使し、様々な情景、感情、物語などをギター1本でありありと表現する。色彩感溢れるその豊かな音色は、聴く者を色とりどりの世界へと誘う。
2012年、モリダイラ楽器主催全国規模フィンガーピッキングコンテストにて優秀賞を受賞。
ライブカフェ宮内家でほぼ毎週木曜日ライブを行い、多くのギタリストとも共演する。
2013年、同コンテストにて優秀賞、オリジナルアレンジ賞、葉山ムーンスタジオ賞 (オーディエンス賞)の三冠を受賞。
2014年、自身初となるフルアルバム『85.』を葉山ムーンスタジオレーベルよりリリース。
アコギソロでライブ活動を展開。ライブやイベントの出演に加え、ラジオ番組への出演やパーソナリティとしての活動、楽曲提供、バレエコンサートとのジョイント、アート作品展とのコラボレーションなど、他分野に渡って精力的に活動を展開。

「85.」
85.

1.夢の旅路
2.85の夏
3.にびいろの風
4.Amazing Grace
5.群青と茜色
6.斜陽
7.君と僕の物語
8.A Whole New World
9.遠き春
10.My Way
11.風薫る季節

2,000円(税込み2,160円

CD販売ページ







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