Acoustic Guitar World
ホーム インタビュー ニュース イベント 電子書籍 レビュー   無料メールマガジン
ギタリストインタビュー矢後憲太
前のページ 1 2 3 4
ーあの転調はどういう発想から来たのでしょうか。矢後憲太

矢後:原曲も度数が違いますが転調をしていので、何とか転調させたかったのですが、オープンチューニングだと難しいんですね。グライダーカポで半音上げる、という手段もあったのですが何か違うという感じだったので、カポを外すというやり方になりました(笑)。オープンチューニングでしか得られない響きというのがどうしても欲しかったんですね。ドロップした下の音とか、和音で音が重なった時に生まれる甘い響きを先に見つけてしまい、これを逃したくなかったんです。カポを使わない転調だったらレギュラーチューニングの方がいいでしょうけど、それだと良さが失われるてしまうと思いました。

ーアルバムタイトルは「85.(ヤゴ)」となっていますね。

矢後:わかりやすいですよね(笑)。85(ハチジュウゴ)でいいかなと思ったのですが、1枚目ということもあり、名前と顔を覚えていただきたいでのでストレートに。収録されている曲で「85の夏」というのもあり、インパクトもあると思います。サンバ調のリズムなんですが、ソロギターではあなり無い曲調だと思います。これを弾くと僕の中でもテンションが上がってくるので、好きな1曲です。 あと、全曲のスコアも製作中です。

ー音数が多いから採譜が大変そうです(笑)。

矢後:そうですね。ですが、ゆったりとした「群青と茜色」や「斜陽」なども入れています。「My Way」もそうですかね。メロディが親しみやすくなってると思います。「群青と茜色」は夕暮れを意識した曲なので、「斜陽」はテーマがかぶってしまうところがあるのですが、ここはあえて対比させたいところがあります。「群青と茜色」は美しい夕焼けやどこか懐かしい曲に対して、「斜陽」は寂寥感がある物悲しい雰囲気です。対比として面白いと思って、あえて続けて入れています。

ーレコーディングで苦労した曲はありますか。

矢後:「遠き春」ですね。僕の中では実験的な曲で、感情がむき出しなんです。しっかり入り込めないと曲の世界感が出せません。これを平坦に弾いてしまうと何の面白みも無い曲になってしまいます。これをテイクごとに集中して入り込んでいくと結構なエネルギーを要します。どの曲でもそうなんですが、特にこの曲は本気で入り込まないといけないというのが一際強かったです。煮え切らない感情の入り方だと、煮え切らないテイクになってしまうんです。細かいタッチやノイズとかではないんです。技術ではなく気持ちなんですね。そういうところで苦労しました。

ー曲順も気を使ったのでしょうね。

矢後:そうですね。一枚アコギだけのアルバムですから、下手をすればその50分間は退屈な時間になりかねません。ですからストレス無く通して聴ける曲順にしたつもりです。アコギ1本とはいってもずっと同じ音という訳ではなく、曲の中でもタッチを変えたり音色の使い方を常に変えながらやっています。自分のタッチで音を変えて曲に表情を与えています。音は右手で作るものだと思っていて、こういうことを曲の中にひとつひとつ散りばめてます。これらを楽しんでもらいたいですね。
いろいろな人に聴いてもらいたいので、精一杯聴きやすい楽曲や曲順、構成、プレイでバリエーション豊かにしました。長く聴いてほしい一枚です。

ー矢後さんの活動で欠かせないのは「ライブ&カフェ宮内家」でのライブだと思います。ここでのライブは2012年のFPDの後くらいからでしょうか。

矢後:その年の秋からですね。FPDの少し後くらいに、草加で住出勝則さんと小川倫生さんのジョイントライブがあったのですが、ブッキングを宮内さんがやられてたんです。この時に初めてご挨拶したのですが、当時は移転するために宮内家は休みでした。秋から新しいお店が始まるから、そこでライブやりなよ、と言われ、そこから毎週木曜日にライブをさせていただき、1年半くらいになりますね。なんで毎週やるの、ということは言われるのですが、僕の中では今でもですが、当時から試したいことがたくさんあったんです。それを毎週安定して実践させていただけるので、テーマを持ってのぞんでいました。ライブ1本を通すことで、曲を弾くことはもちろん、ライブの構成、機材、出音などや、お客さんと自分の気持ちをつなげていくように取り組んでいきました。毎週続けて惰性になるということは全く無く、あっという間でしたね。

ー1年半毎週ライブを行うというのはすごいキャリアの積み重ねになったと思います。

矢後:自分のレパートリーをそんなに増やせるものでもないので、曲はかぶってしまうことはあるのですが、自分の中で実験的な要素として毎回変えていく部分が必ずあります。同じ場所だから見えてくるものもありましたね。やりたいことはどんどん出てくるし、きっとこういうことってどんどん出てきて一生満足できるものではないんでしょうね。

ーこの毎週ライブを行うのは終了されるのでしょうか。

矢後:はい。6月からは宮内家でのライブは月1回くらいで考えています。今まで毎週木曜日でしたがこれからは土日でやりたいと思っています。アルバムも出ますので、ツアーもやる予定です。まだあまり決まってはいないですが、北海道に9月に行くことと関西には行くつもりです。関東は宮内家だけでやっていたので、他のところでもやってみたいと思います。
ゆっくり落ち着いて、自分のペースでツアーができればいいですね。

ー最後にギターファンにメッセージをお願いします。

矢後:ようやくアルバムを発売することができました。ここまで来るのにいろいろな人たちの手助けや応援がありました。早くたくさんの人に聴いてもらいたいです。CDが出来たとはいえ、僕はライブに重きを置いていますので、自分のサウンドを伝えるために会いにいきますの(笑)。ライブ会場でしか味わえない感覚、スピーカーから出る音や、ギターそのものから出る倍音、空気の震える良さを肌で感じていただきたいです。少しずつですが全国展開を始めますので、よろしくお願いいたします。

【2014年4月27日東京都内にて】
前のページ 1 2 3 4


矢後憲太 http://acoustic-kenta-y.jimdo.com
1990年栃木県生まれ。フィンガースタイルギタリスト。多彩な奏法を駆使し、様々な情景、感情、物語などをギター1本でありありと表現する。色彩感溢れるその豊かな音色は、聴く者を色とりどりの世界へと誘う。
2012年、モリダイラ楽器主催全国規模フィンガーピッキングコンテストにて優秀賞を受賞。
ライブカフェ宮内家でほぼ毎週木曜日ライブを行い、多くのギタリストとも共演する。
2013年、同コンテストにて優秀賞、オリジナルアレンジ賞、葉山ムーンスタジオ賞 (オーディエンス賞)の三冠を受賞。
2014年、自身初となるフルアルバム『85.』を葉山ムーンスタジオレーベルよりリリース。
アコギソロでライブ活動を展開。ライブやイベントの出演に加え、ラジオ番組への出演やパーソナリティとしての活動、楽曲提供、バレエコンサートとのジョイント、アート作品展とのコラボレーションなど、他分野に渡って精力的に活動を展開。

「85.」
85.

1.夢の旅路
2.85の夏
3.にびいろの風
4.Amazing Grace
5.群青と茜色
6.斜陽
7.君と僕の物語
8.A Whole New World
9.遠き春
10.My Way
11.風薫る季節

2,000円(税込み2,160円

CD販売ページ







Acoustic Guitar World

トップページ l インタビュー l ニュース l イベント l 電子書籍 l レビュー l EPUBについて l facebook l Twitter 
Acoustic Guitar World について Copyright © Acoustic Guitar World All Rights Reserved.