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ギタリストインタビュー〜AKI-CHU
1970年代からシンガーソングライター、スタジオミュージシャンとして数多くの録音を手がけてきた吉川忠英さんと、ウィンフィールドのフィンガースタイルギター・チャンピオンシップで日本人として初めて優勝し、世界中で活躍する田中彬博さんのデュオ「AKI-CHU」。二人の出会いやギター観など、興味深い話をたくさん話していただきました。

(バックナンバーAcoustic Guitar World vol.24より)

※本文中のアルバム「Same Time」の発売は延期となっています。
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グルーヴの乗り方が一緒の感じがして、すごく気持ちがよかったんです

ーお二人はどのように出会ったのでしょうか。

吉川忠英(以下、忠英):2007年につま恋のヤマハの施設に、ヤマハの特約店の店長さんが日本中から集まったパーティーがあって、演奏をしたんです。そこにアッキー(田中彬博)が来ていて、2曲ほど弾いたんですね。彼がフィンガー・ピッキング・デイで優勝したのを知らなかったので、演奏を聴いてビックリしました。グルーヴの気持ちのいいところが、僕と同じようなところがあるので、すごいなと思って。こういうギタリストには、なかなか会わないんですね。自分のリズムがいいということではなくて、グルーヴの乗り方が一緒の感じがして、すごく気持ちがよかったんです。このことをライブで話したり、こういう人とツアーやりたいという話をしたら、ヤマハさんが叶えてくれまして、2008年にヤマハのアコースティックマインドというツアーで、一緒にやることになりました。

田中彬博(以下、アッキー):普通はこの二人でツアーをするなら、僕が前座で、忠英さんがメインというのが当たり前だと思ってたのですが、忠英さんはそういうのはやめて、お互い同じ時間ずつやろうよ、と言ってくれました。連名にして下さったのは僕も驚いたし、すごく嬉しかったですね。

忠英:そうだったっけ(笑)。業界って年上の方がもてはやされて、威張るじゃないですか。そういうのは嫌で、もっとリベラルに、同等にやりたかったんです。
Acoustic Guitar World vol.24
アッキー:デュオの名前も、忠英さんは夏川りみさんの時は「りみ・忠」、イサトさんとの時は「イサ・忠」といったように、「忠」を後につけるので、「AKI-CHU」の名前が出たときも、やっぱり忠英さんの方がメインなんだからアッキーが先に来るのはまずいんじゃないかとか、そういうことまでヤマハの方達と相談してたんです(笑)今考えると面白いですけど、それくらいこの二人は異例のコンビだったのかもしれません。

ー「CHU-AKI」より「AKI-CHU」の方が響きがいいですね(笑)。田中さんは忠英さんと一緒に演奏をしていて、どのような印象がありますか。

アッキー:僕は小さい頃から「魔女の宅急便」の主題歌だった「やさしさに包まれたなら」が大好きでしたし、母がフォーク好きだったこともあって、知らず知らずのうちに忠英さんのギターを聴いて育ってきたんです。だから初めてお会いしたときは僕もガチガチに緊張していましたけど、忠英さんから心を開いて声をかけてくださったことが、今では本当に嬉しいですね。
忠英さんは見た目もそうですけど、ずっと向上心を持ち続けているというか、心もずっと若々しいんです。
出会って始めの頃は、電話の最後には必ず、「アッキーには負けないからな!」って電話を切るんですよ(笑)。

忠英:子供の頃から負けず嫌いなんですよ(笑)。

ー忠英さんから見て、田中さんはどのような印象なのでしょうか。

忠英:自分がやらないような奏法を上手にするし、リズムがよくて気持ちがいいなと思います。和声の使い方がとても好きで、いい曲だな、というのがたくさんあります。あと人柄ですね。アッキーの人柄が暖かくて、すごく好きです。暖か過ぎるところもありますけどね(笑)。

アッキー:暑過ぎますか(笑)。

忠英:ツアーを一緒に回っていると、いい勉強にもなるし、刺激にもなるし、自分も負けずにいい曲作らなくちゃいけないなと、前向きな気持ちにしてくれますね。お酒も飲むし、話も楽しい。そこがつまらなかったら苦しいじゃないですか(笑)。

ー2008年から一緒にやるようになって、その後はどのような活動をされてきたのでしょうか。

忠英:ヤマハさんのアコースティックマインドで一緒になるくらいだったのですが、そのうちツアーをやらないか、という話になって、最初は京都の法然院でした。その後、四国や中国地方に行ったりして、アッキーの知ってるところと、僕の知ってるところを組み合わせて、ツアーをしようということになり、北陸、中国、関西、四国、北海道など行きましたね。

アッキー:どこへ行っても、忠英さんが「こいつがアッキーだよ!すごいだろ!」と紹介してくださるのがすごく嬉しいです。この流れを僕も繋いでいくというか、受け取ったものに応えていきたいとますます思うようになりました。

ーライブの内容は、半々くらいで演奏しているのでしょうか。

忠英:そうですね。大体最初に二人で出て2曲くらいやって、その後のソロは日替わりで、僕が最初だったら次の日はアッキーがやるとか、一部、二部を分けてます。

アッキー:ツアーの最初に楽屋でジャンケンをして、順番を決めるんですよ(笑)。

忠英:前回のツアーは確か最初に俺が負けたんだよな(笑)。

アッキー:忠英さんはもちろんギターインストも演奏するし、ライブでは歌も歌うし、MCもおもしろい。最近は落語の小咄も入れたり、かなり完成度の高いモノマネまで披露されます(笑)。忠英さんが僕に教えてくれることのひとつは、来てくれたお客さんにとことん楽しんでもらうということ。目の前の人達に対して、自分ができることがあったら何でもするんだよ、という忠英さんの考え方は、僕がライブをする姿勢を大きく変えてくれました。

忠英:ライブには、お客さんにとっては大事なお金を出してもらっているので、本当に来てよかったと、ニコニコして帰ってほしいですね。そこには、エンターテイメントという意識を持たないといけない。眉間に皺を寄せて、うまいギターを聴かせるだけでは、しょうがないと思うんですね。エンターテイメントの粋を集めて、楽しんで帰ってほしい。

ー普通は、ベテランと若手のジョイントだと、最初に若手が出て、最後にベテランが締める、というのが一般的だと思います。そういった感じではないようですね。

忠英:そういうこだわりはないですね。逆の方が格好いいじゃないですか(笑)。若者を前座みたいに先にやらせるのは、ダサいですよ。ダサいのは嫌なので、スマートにやりたいですね。

ー二人での演奏も多いのでしょうか。

忠英:多いですね。それでアルバム作ろう、という話になりました。

ー今回のアルバム「Same Time」のリストを見ると、カヴァーは「Moon River」だけのようですね。「カントリードーロ」は間違いじゃないんですね(笑)。

忠英:「カントリードーロ」は中国地方を一緒に車で旅してるときに、道を間違えて文字通り「カントリー道路=田舎道」に入ってしまって大騒ぎしたことがあって。

アッキー:高速ではなく、下道をえらんだばっかりに途中で行き止まりになるわ、とんでもない獣道だったんです(笑)。忠英さんが運転しながら「まるで俺たちの人生みたいだな」って(笑)。そのエピソードから歌詞のアイデアを皆で作って、結果的にはアルバムの中でも大切なキーになる曲に仕上がりました。
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吉川忠英 http://chuei-yoshikawa.com

1947年東京生まれ
1971年、伝説のフォーク・グループ“THE NEW FRONTIERS”のメンバーとして渡米、“EAST”と改名し、米国キャピトルレコード社よりアルバム『EAST』を発売。全米デビューを果たす。
帰国後、シンガーソングライターとしてデビューし、スタジオミュージシャンとしての活動も始める。
中島みゆき、松任谷由実、福山雅治、夏川りみ等多くのミュージシャンのコンサート、レコーディングに参加、スタジオミュージシャンの第一人者として活動する。
現在もソロギターの活動とサポートの活動を精力的に続けている。

田中彬博 http://tanakaakihiro.com

京都府出身。1986年1月2日生まれ。アコースティック・ギタリスト。
2007年、モリダイラ(株)主催フィンガーピッキングコンテスト全国決勝大会において「最優秀賞(グランプリ)」,「オーディエンス賞」, 「オリジナルアレンジ賞」の三冠を獲得。
2010年9月、アメリカ・カンサス州ウィンフィールドで開催される世界規模のギターコンテスト, 39th Walnut Valley Festival「International Fingerstyle Guitar Championship」にて日本人初, 大会史上最年少でのグランプリを獲得。
翌年に開催された40th Walnut Valley Festivalではオフィシャル・パフォーマーとして, Tommy Emmanuel, Stephen Bennettら40組のミュージシャン・ギタリスト達と共演した。
YAMAHA(株)の全面的なサポートにより始まった海外公演はスペイン, ポルトガル, 中国, 韓国, 東南アジア, ロシア, ウクライナへと広がり, 訪れた国は10カ国にのぼる。圧倒的なパフォーマンスと言葉を超えて胸を打つその音楽性は, それぞれの国で鮮烈な印象を残し, その評価と繋がりは世界的なものになりつつある。

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1,800円(税抜き)
2014/8/29発売
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1.美しき山
2.Sunny Side Up
3.風窓
4.After Rain
5.Four Times
6.Morning Sun
7.Travolution
8.Pavement
9.N.A.D.
10.Sweetness
11.Delight
12.Habanera
13.318 Spring#1
14.タラの庭
15.Simple Life
16.Fuji House
17.一日の終わり
18.Slow Fuji

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2008/4/20発売

1.中庭
2.Good morning train
3.太陽のエチュード!
4.学園天国
5.call
6.夕凪
7.赤のDUENDE
8.三月の雨
9.君と夢の間の銀の翼
10.flower
11.別れの朝に






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