Acoustic Guitar World
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アイリッシュミュージックの造詣が深く美しいオリジナル曲とギターの音色で人気の高いギタリスト、小川倫生さんに自身のルーツやギターのこと、ニューアルバムなどについて話していただきました。
(バックナンバーvol.3より 2012年5月11日栃木県鹿沼市 カフェ・Panama)

Acoustic Guitar World vol.78電子書籍(EPUB)ファイルをダウンロード
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中学生の頃にウィンダムヒルの音楽に出会いました

ーギターを始めたのはいつ頃なんでしょうか。


小川:まず、幼稚園の頃にクラシックピアノを習い始めました。音楽は好きでしたがピアノは自分の意思ではなく、習わされていました。親は僕が音楽が好きなのをわかっていたのでピアノを始めさせたのですが、本人はピアノは嫌いでしたね(笑)。ピアノを聴くのは好きでしたが、バイエルを演奏するのは苦痛だったんです。小学校5年生まで続けましたが、結局好きにはなれませんでした。ドミソの和音とかがダメだったんです。子供ながらその中に7thとか9thを足したりしてましたから。聴いていたロックやジャズにはドミソの和音は絶対になく、子供の頃から求めていた音楽はかっこいいものだったんです。それをクラシックピアノに感じることができなかった。ピアノの発表会も断り続けてましたね。

その後は音楽は聴くだけのものになりましたが、中学生の頃にウィリアム・アッカーマンやマイケル・ヘッジスらのウィンダムダムヒルの音楽を聴いた時に、これは面白いかもしれないと思いました。これらの中にはクラシックにはない7thや9thが複雑に入り込んでいて、格好よく聴こえました。最初はピアノよりギターの方が簡単じゃないかと思って、実はそんなことはないのですが、お年玉でギターを買って来ました。家に帰ってなんとなく弾いてみたら曲になってるような感じで、これならピアノよりいけるんじゃないかと思いましたね。この頃はマイケル・ヘッジスの楽譜などはなかったので、耳でコピーを始めました。マイケル・ヘッジスを見たことはなかったですが、この頃テレビの深夜番組11PMでエアリアル・バンダリーズを生演奏したらしくそれを見た友だちからマイケル・ヘッジスは一人で弾いていることを聞いていました。チューニングはわからなかったですが、低音が明らかにEより低いし普通ではないことを感じてはいました。それでオープンチューニングに魅力も感じ始めました。自分でカスタマイズするというのがよかったですね。ピアノはチューニングを変えようがないですが、ギターでは自分で変えることができる。他にもピックアップつけて低音ブーストしたり、いろいろいじれることにも魅力を感じました。

20才くらいまでずっと一人で弾いてましたが、この頃南澤大介さんの『ギタリスツ』と言う同好会があって、会報を出してたんです。1年に4回くらいでしたかね。この中にはマニアックなことが書いてありました。マイケル・ヘッジスのことや、アレックス・デ・グラッシやピーター・フィンガー、プレストン・リードらのライブレビューがあり、どんな機材を使っていたかなどです。まだインターネットが無い時代でしたから、貴重な情報源でしたね。そこからいろいろな交流ができて、1997年に「アコースティックギター・ソロ」というオムニバスアルバムを浜田隆史さんらと作りました。 これがデビューへのきっかけです。 翌1998年に「太陽と羅針盤」を作成しましたが、それまでも自分の曲をカセットテープに録音、編集したりして、アルバムのようなものは作っていました。 プライベートレーベル「Greenwind Records」は高校生の時に設立しています。自分で作った曲をカセットに録音して1年に1本くらい作ってました。それを浜田隆史さんらとのオムニバスアルバムに外に出すようになり、近所の楽器屋さんとかに卸してました。趣味の域は脱してないですけどね。浜田さんとアルバムを作った時に浜田さんは僕の曲を聴いて、「これはカセットじゃなくてCDにして出さないとダメだよ」といいました。売れるとは思わなかったんですが、浜田さんに励まされて、浜田さんも自分でCDを作成してるので、プレスやレコーディングのノウハウを教えてもらいました。
当時は近所でプレス屋なんかないのでその存在すら知らず、大手レコードメーカーからじゃないとCDなんて出せないと思ってましたね。とりあえず記念でもいいから一枚作ってみよう思って完成したのが「太陽と羅針盤」です。今と同じですが、完全自主制作ですね。 このアルバムが中川イサトさんの紹介やマーチンクラブの紹介などで予想外に売れました。これが売れてなかったらプロとして活動してなかったでしょうね。最初は若気のいたりのつもりで作って、売れなかったら友だちに配ればいいかなと思ってましたので。自分のCDが一枚あるのもいいかなと。売れてなかったら家の仕事を続けてたでしょうね。 これが売れたおかげてピーター・フィンガーのレーベルのオムニバスアルバムに参加しました。
その後、最初の1000枚が完売したこともあり、セカンドを発売して、ギタリストとして生活していけるのかな、自分の音楽が必要とされているのかな、ということを感じてきました。

マイケル・ヘッジス、ブリティッシュフォークをよく聴いていました

ー当時は中川イサトさん、岡崎倫典さん、小松原俊さん、打田十紀夫さんあたりしかフィンガーピッキング、ソロギターの人は有名ではありませんでした。次の世代の台頭が無いなと感じてた頃に、小川さんと岸部眞明さんのアルバムが発売され、ようやく出てきたな、というように感じました。

小川:この頃日本のフィンガーピッキングの状況というのは僕は全く把握してませんでした。洋楽しか聴いたことなく、イサトさんの曲すら聴いてなかったです。 最初はどこにCDを置いてもらえばいいかもわかりませんでした。プー横丁さんからはCDを買ってたこともあってここはいいかなと思いましたが、後は楽器店とディスクユニオンくらいでしたね。自分で連絡をして置いてもらって、半年に一回くらい状況を聞いて、という感じでした。
当時はこういうことやってるのも自分くらいかと思ってました。イサトさんなら長くプロのギタリストをしているのでメジャーレーベルとかと思っていたら自分と同じように販売してることを聞き、驚きました。僕はちょっとずれてるのかもしれませんね(笑)。でもこのずれ具合をイサトさんは気に入ってくれました。

うちの家系はミュージシャンなどは全くいなかったので、ミュージシャンがどうやって生きていくのか全然わからなかった。ファーストアルバムを出したのも多分すごく遠回りしたと思います。

今の若い人たちにはフィンガーピッキングデイのようなコンテストはあるし、CDのプレスの方法もわかっていて、行動が早いですよね。コンテストで優勝した人はプロのお墨付き、といったように現在20代後半から30代前半くらいの人たちが多く活躍してますが、それほど年齢は離れていなくてもすごく世代の差を感じます。

ーそうですね。小川さんの後から出てきたギタリストは少しフィンガーピッキングの環境が違うように思えます。

小川:同じ時期にファーストアルバムを出したAKIさんとか僕なんかはもっとのどかでマイペースだった気がします。今はテクニックの追求とかYoutubeのアクセス数を意識したりとか、押尾コータローさんがメジャーデビュー(2002年)したあたりから、そういう傾向が出てきている気がします。今は20代の人はもちろんですが、10代でもいいギタリストがたくさん出てきています。僕らが10代の頃はこういったジャンルが確立していなかったです。今はYoutubeでじっくり見ることができるし情報が入りやすいですね。僕らは逆にわからないことにわくわくすることもありました。ファーストアルバムを出した時もインターネットはまだ普及してなかったので、チラシを配ったりはがきを書いたり地道に宣伝してました。
最初はカセットのMTRで録音もしていました。「太陽と羅針盤」の前の「雪夢」はカセットMTRでした。これは1996年ですね。録音歴は古いと思います。日本の動きを見てなかったからかえって早く動けたかもしれないですね。海外のインディーズをよく見ていて、自分で録音することが普通な状況でした。

先日一緒にライブをした西村歩さんにキャリア長いですね、といわれたんですが、年齢は3,4才しか変わらないんです。よく岸部さんやAKIさんと同じくらいの年齢と思われます。(実際は岸部さんとは10才差です。。)ライブに初めてきた人にはよく「思ってたより若いんですね」といわれます。あと「太陽と羅針盤」を出した98年頃は20代でアルバムを出していたのは僕くらいしかいなかった。今年齢が同じ30代後半くらいなのは伊藤賢一くんと天満俊秀くんくらいですね。一番層が薄い世代です(笑)。僕らが学生の頃はバンドブームでアコースティックは流行ってなかった。長渕剛くらいですね。マイケル・ヘッジスにしても僕は中学生の頃から聴いてましたが、タイムリーに聴いてたのは僕らの上の世代でしょう。僕らより下の世代はクラプトンのアンプラグドなどでソロギターを知って、イサトさんやマイケル・ヘッジスにたどり着くようです。だからヘッジスが亡くなった後じゃないですかね(ヘッジスは1997年12月2日没)。
今の10代の人はヘッジスをリアルタイムでは経験してない。僕もライブは見にいってなくて、ヘッジスの最後の来日は高校生の頃で平日でした。すごく高かったような気がします(笑)。次でいいかなと思ったけどフィンガースタイルが下火になって結局こなかった。すごく残念ですね。
僕は10年くらいヘッジスを体験していて、次のアルバムをわくわくしながら待っていたんです。
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小川倫生 http://ogawa-michio.com

1974年生まれ。
5才からクラシックピアノを始め、中学二年生でギターを始める。
高校1年生の6月にカセットレーベル「Greenwind Records」を設立。
1998年にファーストアルバム「太陽と羅針盤」リリース。
1999年にギタリストのPeter Fingerが主宰するドイツのレーベルAMRのコンピレーションアルバム「Acoustic Guitar MADE IN JAPAN」に参加。
2001年2ndアルバム「スプリングサインズ」リリース。
2003年3rdアルバム「Night Jasmine」リリース。
2006年4thアルバム「PROMINENCE」リリース。
2012年5thアルバム「Si Bheag,Si Mhor」リリース。
2014年プロデューサーとして東日本大震災復興支援プロジェクトCD「木を植える音楽」を担当。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
スプリングサインズ

発売時期:2016年6月17日
レーベル:Greenwind Records
販売価格:2,500円+tax


Spring Signs (disc 1)

1.April Collector
2.Miss Eliza Green
3.Magnolia
4.Bob's Popo
5.Maggie's Kitchen Garden
6.Almost Summer
7.Two Years Or Three-The Gardener
8.Windy Afternoon
9.The Major Flower Pot
10.Dazzling Blue
11.Starry
12.Astral Twins
13.Spring Loops

Spring Analyze (disc 2)

1.冬の終わり
2.Spring Fever
3.Slighting Song
4.High Exposure
5.Resilience of Season
6.曇りのち雨
7.夜明けのバイオスフィア part.1
8.Star Terrace
9.Nectarine Sweet
10.April Collector (Bright Moment Mix)
11.夜明けのバイオスフィア part.2
12.Lomo
13.Gradiva
14.潜水艦の影
15.Spring Lines


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LAST TRAP
販売価格:2,500円(税込)
レーベル:Denpo-G Studio

1. Sagitarius
2. 旅の座標
3. Reynardine
4. Nine Apple Seeds
5. Updown Highway -中国自動車道に捧ぐ-
6. Last Trap Blues
7. The Water is Wide
8. Night Jasmine
9. Quantje suis mis/Tourdion
10. Jock O'Hazeldean

Amazonで購入
 












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