Acoustic Guitar World
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小川倫生
ーギターを始めた時、いきなりマイケル・ヘッジスだったのですか?


小川:歌ものもやってはいましたね。ニール・ヤング、リチャード・トンプソン、バート・ヤンシュとかのブリティッシュフォークなどです。歌も好きだったのでイギリスのトラディショナルもやってました。ブリティッシュフォークもギターはオープンチューニングとか凝ってます。ロックも聴いていて、ソニック・ユースのサーストン・ムーアはエレキギターですが変則チューニングだったので、ここからもヒントを得ていました。ジャズ系のラルフ・タウナー、ジョン・アバークロンビー聴いてましたね。

ー日本の音楽はないですか?

小川:ないですねぇ(笑)。子供の頃、親が聴いてたギターの曲でいいなと思ったのがサンタナだったというように、親も日本の音楽を聴いていなかった。あえていえば、はっぴいえんど、くるりなどを聴いてました。売れてるメインストリートの音楽は聴いてなかったです。今は邦楽も聴きますけどね。
あとジョン・フェイヒィが好きでよく聞いてました。今はずいぶん高くなってしまってますが、ディスクユニオンで当時は中古LPが安く売ってましたので。この頃はギターマガジンでもこういった音楽は載ってなかったのですが、打田十紀夫さんが書いてるコーナーがありました。そこにジョン・フェイヒィのことも書いてあったりして、何度も読み返しましたね。打田さんのTABにはお世話になりましたね。

ー打田さんも小川さんはビデオとかたくさん買ってくれたといってましたね。

小川:そうなんです(笑)。ビデオだけでなく、昔のギターマガジンのバックナンバーでブリティッシュフォークのことが書いてある記事をコピーで送ってくれませんか、と頼むと送ってくれました。電話すると打田さん出ましたし(笑)。その頃はただのマニアな客でしたが、その後一緒に演奏するようになってから当時のことを話したら覚えてましたね。すごくマニアックな質問もしてましたので覚えてたんでしょう。打田さんには貢献したと思います(笑)。TABさん、プー横丁さん、ディスクユニオン、あと新宿にアコースティックフリークという通販のCD屋さんがあったんですが、そこでも古いフィンガーピッキングのCDとかよく買ってました。 ウィンダムヒルのレコードには中川イサトさんの解説が書いてあって、マイケル・ヘッジスがブルース・コバーンやジョン・マーチンの影響を受けていたと書いてありました。それを見て、ブルース・コバーンを聴いたりしました。ただ、当時は中川イサトさんをギタリストとして知らなくて、音楽評論家だと思ってました(笑)。中学、高校生くらいの頃ですね。

オキャロランの決定版があったので今まで躊躇していました

ー6月10日にニューアルバム「Si Bheag, Si Mhor」(シーベグ・シーモア)」が発売されますね。

小川:はい。アルバムタイトルは300年くらい前のハープ奏者である、ターロック・オキャロランの代表曲の一つのタイトルです。曲はオキャロランのカヴァーですが、4曲オリジナル、1曲アイリッシュトラディショナルがはいっています。

ーオキャロランの曲は元々はハープの曲ですか。

小川:はい。オキャロランはハープ奏者で、アイルランド中を馬で放浪しながら、曲を作っていたようです。230曲くらいあります。日本ではあまり知られてないと思いますが、アイルランドでは国民的な作曲家で、お札の肖像にもなっています。アイリッシュハープはアイルランドの代表的な楽器でもあります。元々トラディショナルが好きだったので、このオリジナルを演奏するバンドを組んでたこともありましたし、昔からオキャロランのカヴァーを出したいと思ってたんです。

ー今回のアルバムではギターを4本使用しているということですが、どのようなギターを使用したのでしょうか。

小川:メインはローデンO-23Cです。シダートップ、ウォルナットサイド、バックでこのモデルはあまり市場に出回っていないと思います。最初に買ったローデンで、95年製くらいです。今回のレコーディングでは使ってないですが、ローデンはO-12も持っています。スプルーストップにマホガニーサイド、バックで、主にこちらをライブで使っています。ローデンのローズウッドはちょっと音が重い気がして、マホガニー系の方が好みです。ウォルナットもマホガニーの音に近いですね。トップがスプルースの方がピックアップのノリがよくてハウリングが少ないので、O-12をライブでは使用しています。この他に使用したのが1989年製のマーチンOO-18、ヤマハの12弦、モーリスF-12という70年代くらいのギター。このモーリスは中に製作者の名前が記載してあります。友人の同じモデルのギターには別の製作者の名前が記載されてました。同じモデル名でも形が若干違いましたね。量産のようですが、手工品に近かったのではないでしょうか。大きさはOOと同じくらいです。

ーライブでは複数のギターを使うことはありますか?

小川:1本が多いですが先日ヤマハの12弦と2本使用しました。ソロギターで12弦使う人は少ないと思います。ラルフ・タウナーやレオ・コッケとか、好きなアーティストが使っています。

ー今までアルバムで12弦を使ったことはありますか?

小川:初めてです。音は好きですがチューニングが面倒くさいです(笑)。あと握力も使うので、12弦で弾いた後、次の曲を弾くのが大変になってしまいます。チューニングを下げてテンション落としたりしないと辛いですね。外人は握力があるので気にならないかもしれませんが。指や爪も痛めやすいですのでピックで弾くのにむいてるのでしょう。フィンガーで弾くのは特殊でしょうね。

ー今回はどのような曲で使ったのでしょう。

小川:アルバムの8、9曲目になる、「The Clergy's Lamentation~ExtentionⅠ」「Lord Galway's Lamentation~ExtentionⅡ」で使用しました。「Lamentation」は日本語でいうと「悲歌」で、重いムードの曲です。特殊なチューニングで、6弦をAまで落としてます。DADGADというチューニングがありますよね。それの6弦を落として、AADGADにしています。6弦と5弦がオクターブになっていて、そこをずっとドローンで鳴らしてコードとメロディをいれています。

ーこのチューニングは今回考えたのですか?

小川:そうです。初めて使いました。この曲のために作ったチューニングです。今回は4つのチューニングを使っています。DADGADがメインで、12弦のAADGAD、他にEBDF#AD、DADF#BDを使いました。アイリッシュはDADGADが多いのですが、そこからの派生ですね。

ー今回のアルバムではどのようにギターを使い分けたのでしょう?

小川:曲の個性に合わせたというところでしょうか。素朴な音が欲しい時はマーチンにしたりとかありますが、直感的なものです。

ーテンポが速い曲はこのギターとか?

小川:そういう訳ではないですね。同じ曲を違うギターで弾き比べて決めました。理屈ではなく直感ですね。アイルランドの曲だからローデン、という訳でもなく、マーチンでも合うこともあります。12弦で録音した曲も最初は6弦でチューニングもDADGADでアレンジしたのですが、12弦で弾いたらどうなるかな、と思って試したら良かったんです。もともとAの曲だしもっと低音がほしいと思ったので、6弦もAとしました。6弦は開放で鳴らしっぱなしです。
今までのアルバムもそうですが、曲とギターとの実験ですね。同じチューニングで、曲がたまったから発表します、というのは興味がないんです。そこに実験的なものを取り上げないとモチベーションがあがらない。試行錯誤して、今までにない響きを出してみたいんです。それがチューニングであったり、ギターのチョイスであったり、曲の構成であったりと。チューニングも既成のものだけでなく、自分でも作ります。最初にチューニングができて、そのムードから曲ができたり、この曲にはこのチューニングのムードが合うとかあります。チューニングは作曲の面ではすごく重要ですね。音楽理論的にも重要だし、オープンチューニグは開放の時のムード感は大事ですね。スタンダートチューニングからは得られないハーモニクスや開放の音の兼ね合いで触発されることがあります。逆に落とし穴があって、オープンチューニングに頼ってしまう場合があります。チューニングに頼ると曲奏がおろそかになってしまいがちなので、気をつけています。スタンダードチューニングは開放では曲にならずいろいろコードを考えますが、オープンDとかでは開放でDの音が出るので、ちょっとメロディ足せば一応曲になる。そういう厚みのない曲になってしまうことがあります。オープンチューニングでなまけるというのが一番嫌いなので、自分で使ってはいますが、そこからもっと深みを出していきます。 普通のチューニングはコードの位置とか頭に入ってますが、オープンチューニングだと全部バラバラになります。そこからチューニングに生かした運指や曲奏を考える。自分で考えたチューニングだとなおさらですが、他の人には出せない響きがあり、オリジナリティにつながります。一つ自分にとっていいチューニングを発見するとうれしいですね。他の曲にも対応できたりすると普遍性ができてきて、自分のサウンドが開拓できたなというのがあります。
今回使っているチューニングの一つEBDF#ADは前作の「PROMINENCE」のタイトル曲の「PROMINENCE」「レンズと太陽」から使っていて、それがアイリッシュに対応できたというのは面白かったです。これを3曲使ってますね。DADF#BDも面白いです。D6ということになりますが、一時期中川イサトさんがよく使っていました。僕はアイリッシュに合ったので使ってましたが、後からイサトさんが使っているのを知りました。



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小川倫生 http://ogawa-michio.com

1974年生まれ。
5才からクラシックピアノを始め、中学二年生でギターを始める。
高校1年生の6月にカセットレーベル「Greenwind Records」を設立。
1998年にファーストアルバム「太陽と羅針盤」リリース。
1999年にギタリストのPeter Fingerが主宰するドイツのレーベルAMRのコンピレーションアルバム「Acoustic Guitar MADE IN JAPAN」に参加。
2001年2ndアルバム「スプリングサインズ」リリース。
2003年3rdアルバム「Night Jasmine」リリース。
2006年4thアルバム「PROMINENCE」リリース。
2012年5thアルバム「Si Bheag,Si Mhor」リリース。
2014年プロデューサーとして東日本大震災復興支援プロジェクトCD「木を植える音楽」を担当。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
スプリングサインズ

発売時期:2016年6月17日
レーベル:Greenwind Records
販売価格:2,500円+tax


Spring Signs (disc 1)

1.April Collector
2.Miss Eliza Green
3.Magnolia
4.Bob's Popo
5.Maggie's Kitchen Garden
6.Almost Summer
7.Two Years Or Three-The Gardener
8.Windy Afternoon
9.The Major Flower Pot
10.Dazzling Blue
11.Starry
12.Astral Twins
13.Spring Loops

Spring Analyze (disc 2)

1.冬の終わり
2.Spring Fever
3.Slighting Song
4.High Exposure
5.Resilience of Season
6.曇りのち雨
7.夜明けのバイオスフィア part.1
8.Star Terrace
9.Nectarine Sweet
10.April Collector (Bright Moment Mix)
11.夜明けのバイオスフィア part.2
12.Lomo
13.Gradiva
14.潜水艦の影
15.Spring Lines


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LAST TRAP
販売価格:2,500円(税込)
レーベル:Denpo-G Studio

1. Sagitarius
2. 旅の座標
3. Reynardine
4. Nine Apple Seeds
5. Updown Highway -中国自動車道に捧ぐ-
6. Last Trap Blues
7. The Water is Wide
8. Night Jasmine
9. Quantje suis mis/Tourdion
10. Jock O'Hazeldean

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