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伊藤賢一雑感コラム ギター路地裏


第8回 この一枚を聴く The Beatles「Abbey Road」2019リミックス

アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤 賢一です。 今年もいよいよ終わってしまいます。寒さとともに湿度の低下による体調不良、そ してギターコンディション不良には、充分にお気をつけください。 エアコンの効いた部屋では、かならずケースに入れましょう。

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2017年から始まった、いわゆるリリース50周年行事。
2017年「サージェント・ペパーズ~」、2018年「ホワイト・アルバム」ときて、 2019年はいよいよ「アビー・ロード」となる。
先の2作リリースの60年代当時は、ステレオ・ミックスも同時発売されていたとは いえ、あくまでモノラル・ミックスが中心であった。メンバーがミックス作業に立ち会ったのも、モノラル・ミックスのみだったとされている
。 50周年リミックス事業の意義としては、リリース当時のステレオ・ミックスではなく、あくまでモノラル・ミックスを元に新たなステレオ・ミックスを施すという側面もあったが(まあ、ホワイト・アルバムではそれは全く当てはまらないが・・)、この「アビー・ロード」はリリース当時から、ステレオ盤のみの発売だ った。なので、今回はより、大胆なリミックスが予想されていた。

今回のリミックスも、ジャイルズ・マーティン(ビートルズのプロデューサー、ジョージ・マーティンの息子)の手によって行われた。
彼の作る音の特徴は、楽器や声の質感がブラッシュアップされ、その結果として各パートがよく分離している点が挙げられる。
それでなくても60年代当時からビートルズの「録り音」は実に良く、それがさらに 楽しめるのが一番の美点だと思う。
その反動として、コーラスのハーモニーパートがやたら目立つようになったのは個人的に少し残念な点だ。それにより良い効果を得ている曲もあるが、リードボーカルの周波数を少し食ってしまうだけでも「もったいない!」と思わせるのが、自分 にとってのビートルズなのである。

さて今回のアビー・ロード・リミックス。
かなり賛否が分かれている状況らしい。

個人的には、大絶賛。
かなり楽しいアルバムとなっている。
理由は単純で、エレクトリック・ギター(ベース)の音色が実に素晴らしく仕上が っているからだ。
アビー・ロードといえば、エレキギターの名演の宝庫で、前作のアコースティック色はかなり影を潜めているのが興味深い。
特に感動したのが、「サン・キング」のリフの厚み。「アイ・ウォント・ユー」の すべてのギターの音(この曲は音量バランスも完璧になったと思う)。ベースで は、「サムシング」と「アイ・ウォント・ユー」の楽器の違いがはっきりわかるのが楽しい。(前者はリッケンバッカー、後者はヘフナーのヴァイオリン・ベース、 だと思う)

白眉はやはり「アイ・ウォント・ユー」だろう。
自分にとって「ビートルズといえばこの曲」のひとつなのだが、今回のリミックスでボーカルがかなり前に出てきたのに思わず小躍りした。
今までのバージョンではユニゾンで演奏されるギターが強く、それも魅力といえば 魅力なのだが、やはりジョンの歌がディテールまで再現される快感が上回った。ただ、度々出てくる「She’s So....」ではやはり下をハモるコーラスが強くなり、きれいになってしまった。強烈なリフを呼び込む迫力が半減したのが残念だ。

では、ジョージ・マーティンのオリジナル・ミックス、ジャイルズ・マーティンの 今回のリミックス(2009年リマスターか、2019年リミックスかの比較となる)で は、どちらが優位か。
アルバムとしての質感を比較すると、断然今回のリミックスが上回る。しかし、ステレオでありながら塊ような重々しい空気感を収めた2009年盤も実にリアリティがある。当然2009年盤の方がオリジナルミックスなので、おそらく永遠に聴き継が れるのはこちらの方だろうと思う。
各曲の比較として、明らかに2009年が良いと思えるのは「ヒア・カムズ・ザ・サ ン」。2019年盤は各パートの音質は最高、特にドラムの音が素敵すぎて、それがかえってアンバランスに感じてしまう。その点2009年盤はすべてが「ジョージ」として収められている、ような気がするのだ。
演奏者本人たちと直に仕事をしたかどうか、それがこの曲には特に表れているのだ と感じる。
そういうものが仕事に滲み出るジョージ・マーティンやジェフ・エメリックは、や はり凄い人だった。そんな思いを得たのも、翻ってこの2019年盤の価値と言えそう だ。

アビー・ロード


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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com

1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。

伊藤賢一

【2020年1月4日】

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