Acoustic Guitar World
ホーム インタビュー ニュース イベント 連載 レビュー 電子書籍   無料メルマガ
連載
LAST GUITAR
sign-pole records

特集記事逆瀬川剛史
ジョージ・ローデン & 小川倫生TARO & JORDANギタリストインタビュー〜さらさギタリストインタビュー〜Justin Kingギター製作家インタビュー〜Jack Spiraギタリストインタビュー〜GIN木村大ソロギターの日スペシャルコンサート2015エバラ健太竹内いちろギタリストインタビュー〜伊藤祥平ギタリストインタビュー〜吉川忠英ギタリストインタビュー〜下山亮平ソロギターコンサート Dramatic!!ギタリストインタビュー〜塚本浩哉ギタリストインタビュー〜小沼ようすけ
ギタリストインタビュー〜ギタリストインタビュー〜Antoine Dufourギタリストインタビュー〜okapiソロギターコンサート+ Song & Guitarギタリストインタビュー〜住出勝則ギタリストインタビュー〜矢後憲太ギタリストインタビュー〜小松原俊
ギタリストインタビュー〜AKI-CHUギタリストインタビュー〜Shohei Toyoda
伊藤賢一雑感コラム ギター路地裏


第19回 ディテールを聴く Yes「Siberian Khatru」

アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤 賢一です。
大変だった2020年もいよいよ年末。個人的には音楽的な出会いが多かった年でした。特にメイン楽器が変わったのが事件でした。その話題も追々ご紹介しようと思います。
今回はプログレッシブ・ロックの横綱とも言えるYesの名曲のディテールに焦点を 当て
ます。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・ ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・

Yesのアルバム「Close To The Edge」(邦題『危機』)は、バンド絶頂期の最高傑作と言えるでしょう。
全3曲という大胆な楽曲構成ながら、長尺さを感じさせず一気に聴かせてしまう優れた構成力。メンバーの充実した演奏能力。さらに言うと前作「こわれもの」で得た自身のスタイルと商業的後押し。すべてが合致して生まれた名作だと思います。

プログレッシヴ・ロックと一言で言っても、各団体には他と相容れない音楽的特徴が当然あるわけです。
ビッグネームでもそれぞれ全く異なる音楽性を描きます。King Crimsonはロバート・フリップ先生のカリスマと、メロトロンとサックスを多用したサウンドメイキングに特徴があるし、エマーソン・レイク&パーマーは当時の最新鋭機器であるムーグ・シンセサイザーを核に近現代のクラシックへのオマージュを絡め、ピンク・フロイドはアルバムごとの強靭なコンセプトを前面に、叙情性とサウンド・クオリ ティに長けている。
その中ではYesが最も普通のロックバンドっぽい気がします。

そう感じさせる要因は、リフの巧みに使った楽曲構成にあると思います。
あまり語られる事はありませんが、Yesはリフ作りの達人です。
長尺な曲に異なる複数のリフを絡める事で、曲調に変化を持たせる手法。これは他のプログレバンドとハッキリ異なる個性だと思っています。

前作「こわれもの」を例に取ると、代表曲の「Roundabout」での強烈なベースラインとギターとの絡みから始まり、それが切り味鋭いギターのカッティングに姿を変え、また展開部ではギター低音部とベースによるドスの効いたユニゾンパートを示し、いくつもの印象的なリフが散りばめられています。「Long Distance Runaround」では、逆に一つの変拍子リフをサブリミナルさせる手法で聴かせます。どちらも音楽全体への絡め方が効いていて、良い効果を生んでいます。

そして今回取り上げる楽曲「Siberian Khatru」では、また更に感動的な手法が採られています。 この曲も途中までは「Roundabout」同様、キーボードによる壮大なリフ、ギターによる変拍子リフなど、いくつものリフを織り交ぜて展開するタイプなのですが、間奏でいきなり全く別の曲になります。

時間でいうと3:05に始まる4分の2拍子と8分の5拍子との複合リフ。歌が「♪ドゥララッターラタター」ときた直後に入る「♪ターターターララッタッター」というリフですね。
これがいきなり提示されてそこから万華鏡のような長い間奏となります。チェンバロ音のキーボード ~ ギターでのロングトーン ~ エッジの効いたソリッドなギターソロ、随所にこのリフが絡められて展開する様は実に見事で感動的です。またこの間奏でのベースとドラムスが素晴らしい。そして間奏が終わってからは、完全にメイン曲の世界に戻り、この複合リフが現れることはありません。

この間奏の見事なアイディアは、バンドのピークの瞬間のひとつのようにも感じます。今でもこの間奏に来ると心が熱くなってくるほどです。

いわゆる”リフ”に限らず、”音型”に敏感になると、音楽は100倍楽しくなります。ぜひいろんな音型のマジックを見つけてみてください。

「Close To The Ed





伊藤賢一雑感コラム ギター路地裏 TOP へ



伊藤賢一 http://kenichi-ito.com

1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。

伊藤賢一

【2020年12月1日】

Acoustic Guitar World

トップページ l インタビュー l ニュース l イベント l 電子書籍 l レビュー l EPUBについて l facebook l Twitter 
Acoustic Guitar World について Copyright © Acoustic Guitar World All Rights Reserved.