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伊藤賢一雑感コラム ギター路地裏


第32回 この一枚を聴く Gilbert O'Sullivan 「A STRANGER IN MY OWN BACK YARD」

アコースティック・ギター・ワールド読者の皆さまこんにちは!ギタリストの伊藤賢一です。
今回は前々回に続き、私のアイドル、ギルバート・オサリヴァンの名作をご紹介します。

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ギルバート・オサリヴァンといえば「アローン・アゲイン」の大ヒットがあまりにもインパクトが強いためか、アルバム単位で語られることが少ないように感じます。
事実、日本においてはベスト盤が5,6種類もリリースされており、そうなるとどうしても「アローン・アゲイン」「クレア」といったヒット曲中心に認知されてしまいます。しかし実はオリジナル・アルバムにこそ名作が数多くあるのです。
デビューアルバム「ヒムセルフ」と、シングル「アローン・アゲイン」の後にリリースされて大ヒットした「バック・トゥ・フロント」の2枚は特に名作として知られますが、今回ご紹介する4枚目「A STRANGER IN MY OWN BACK YARD」 は、地味ながらも素晴らしいメロディに彩られた珠玉の一枚です。個人的には「ヒ ムセルフ」と共に、最も好きなアルバムです。

15曲収録されていますが、冗長さは皆無で、バランスの取れた構成。全体を通して感じるリリシズム。これらを踏まえるとソングブックの体を為したトータル・アルバムと括っても良いものだと思います。

軽快な「A Woman's Place」を前半の中心に据えたプログラムは、さわやかな展開で進みます。誰もが好きであろうかわいらしい小品「No More」から、アルバム 全体のメインとも言える「It's So Easy To Be Sad」へたたみかける構成が素敵です。

B面はファンキーな「Just Like Me」で開始し、「Victor E」からは内省的な小品を連ねてじわじわと充実してくる感覚を味わえます。
また、A面のハイライト「The Marriage Machine」と、B面のハイライト 「Nothing To Do About Much」が、ともにアコースティック・ギターのストロークが非常に印象的なのもトータルとしての狙いを感じます。

オサリヴァンは天才的なメロディ・メイカーには違いありませんが、あくまでさり気ないサウンドに留めるのが彼の美学ですね。少しも押し付けてこない分、後からじわっと効いてくるのだと思います。この感覚にハマると、彼の音楽はきっと一生の宝物になると思います。
ヒットメイカーとしてのみならず、トータルで聴かせるサウンド・デザイナーとして のオサリヴァンをぜひお楽しみください。

A STRANGER IN MY OWN BACK YARD





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伊藤賢一 http://kenichi-ito.com

1975年東京都新宿区生まれ 1994年 ギター専門学校(財)国際新堀芸術学院入学。
1998年(財)国際新堀芸術学院卒業。以後ソロ活動へ。
2001年フィンガーピッッキングデイ出場、チャレンジ賞獲得。
2001年1stアルバム「String Man」リリース。
2002年2ndアルバム「Slow」リリース。
2007年3rdアルバム「海流」リリース。
2010年4thアルバム「かざぐるま」リリース。
2012年5thアルバム「Tree of Life」リリース。
2013年ライブアルバム「リラ冷え街から」リリース。
2015年初のギターデュオアルバム『LAST TRAP/小川倫生&伊藤賢一』をリリース。
2016年田野崎文(Vo)三好紅( Viora)とのトリオtri tonicaのアルバム「alba」リリース。
2017年6thアルバム「Another Frame」リリース。
2018年三好紅(Viora)とのデュオIndigo Noteのアルバム「Can Sing」リリース。

伊藤賢一

【2022年1月3日】

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